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・うつくしい子ども

book day

"あの偉い発明家も凶悪な犯罪者もみんな昔子どもだってね"

THE YELLOW MONKEYのJAMの一節だ。初めてこの歌を聴いた時の衝撃は忘れないし、紅白歌合戦でこの歌を唄っていた姿に涙するほど感動した。この歌詞には同意せざるを得ない。その通り。どんなに偉そうに踏ん反りがえっている政治家や彼らを追い詰める記者とか、覚醒剤に手を出す野球選手やイチローだって、みんな子どもだった時代がある。

 

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『うつくしい子ども』石田衣良

この本は友人の勧めだった。こんなに自分の趣味とぴったりくる本は読んだことがなくて、心が震えた。

13歳の弟が幼女を殺害した殺人犯だったことが判明した14歳の兄が主人公の物語だ。実際にこの様な事件が起こったら、殺人犯の少年や少女の家族は糾弾され、プライバシーは侵害され、人権なんてなくなる。挙げ句の果てには、育て方に問題があるとかなんだか偉そうな専門家とかコメンテーターという看板をぶらさげた人間に言われる。社会的弱者は圧倒的に弱く壊されて行く。この本にもその描写は強く書かれている。そこにいる殺人犯の家族の傷みは私たちにも分かるはずだ。

 

以前も述べたことがあると思うが、私は、ワイドショーのコメンテーターが気に入らない。いじめ問題が起きれば「誰かが気付けなかったのか」「誰かが救えなかったのか」などとコメントする。このコメントが大嫌いだ。気付けないし救えなかったからこうなってるんだ。自分の家族の生活に全く悪がないとでも思ってんだろうか。身内の変化にだって気付けないだろう。気付くとか救うとかはそんな簡単なもんじゃない、言葉にすると呆気ないけれど簡単なことじゃないんだ。

 

主人公のジャガは、描写から推測するに身体も小さく世間では幼いとされる中学2年生だ。そんな彼と彼の周りにいる大人から見てもかっこいい精神を持った友達の想いというのはどうしたって真っ直ぐで恥じるところがなく強い。眩しいし自分の諦めとか弱さが恥ずかしくなる。犯罪者の家族、そして犯罪者の家族の友達。偏見なく、今までの関係を変えることなく接し続ける強さは私たちにあるか??家族を糾弾する資格があるのか?

悪というものが何から生まれるのかというのも考えさせられる。環境なのか遺伝なのか。人殺しになってもらいたいと子どもを育てる親は居ないはずだ。ということは、私たちの誰もが凶悪犯になる可能性があるということである。

 

殺人犯の家族としての生き方、殺人犯の家族への接し方、悪がとこが来るのか、悪は糾弾されればそれでいいのか、全てを報道することが真実なのか、大人とは子どもとは何なのかなど、比較的薄い小説の中で考えるべきことが盛り沢山だ。 スピード感が緩まない小説で一気読みが可能。2時間時間が空いたならば読んでほしい。読んだら1つ大人に近づける本だった。