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・従順な気持ち

 

小学6年生の男の子が父親に殺された。理由は受験勉強をしなかったから、だそうだ。

 

私は学習塾の受付、事務のアルバイトをしていたことがあるから小学生の受験については詳しい方だと思う。年々激化していることも、親が子供に実力以上の期待をしてしまっているところも目にしたし、外で遊びたい気持ちをグッと我慢して机に向かっている小学生も見てきた。小学生の彼ら自身が明確に、ここに行きたい、この学校に通って勉強したいという意志があるなら我慢も必要で、合格に向けての茨の道を進む覚悟を持てと言うと思うし、遊んでいたら怒るだろうな。ライバルは今この時も勉強してるんだぞって言うかもしれない。親が今この時間も働いたお金で君はここに居るのだから勉強して恩返しするのが筋だろうと言うと思う。

でも残念ながら、中学受験とは、親が受験させることの方が多い。だから結果的に勉強したくないし、遊びたいのに勉強しなきゃいけない、楽しくないのに机に向かわなきゃいけないという状況が出来上がる。

勉強したくないという生徒をたくさん見てきた。お気に入りの先生が辞めたから僕も辞める、辞めてずっとやりたかったバスケットボールをやると塾を辞めていった生徒もいる。先生が辞めたくらいで受験止めるの?!と言う人もいるかもしれないけど、それがその子の一番やりたい事で人生の選択なんだ。それくらいのスタンスで良いんだよ、中学受験は。本当はね。

だって中学受験に落ちたって公立の中学校があって、そこで勉強してトップクラスの高校に進学、大学に進学することなんて余裕で出来る。中学受験に失敗したくらいで人生をやめる必要なんて無いんだ。また、人生をやめさせる必要だって無い。絶対に無い。

 

亡くなった男の子の将来はどんな可能性があっただろうか。嘘臭いかもしれないけど、それこそ無限大だった。中学受験にもしかしたら合格してたし、中学生から始めたバスケットボールで全国優勝、高校では全国模試1位になる、ブラックジャックに心打たれ医師を目指す...なんて彼のことを何も知りもしないけど、そんなこともあったかもしれない。あったかもしれない未来だ。

 

江戸時代から親殺しは極刑に処された。でも子殺しは極刑でなくて、生きて帰れる。現代でも確かそう。親殺しの方が罪が重い。子供がうさぎのケージに閉じ込められてご飯を与えられずに衰弱死したとしても9年塀の中に居れば外に出られる。そんな世界だ。あくまで私の意見なんだけれど、親よりも子供の残された未来の方が長い。だから子供の命が奪われることの方がずっとずっと残忍なことだと思う。残された未来の可能性は、9年なんかじゃ取り戻せないもっともっと大切なものだったはずだ。いや一生経ったって取り戻せるはずがない。

怒って仲直りした後のぎこちない笑顔、熱が出たら心配してくれる優しさ、体調が悪い時に作ってくれるお粥の美味しさ、遠出した時に撮った写真。家族にはそんな何でもないけど胸が温かくなるようなくだらない思い出があるだろう。信頼していた父親に殺された彼はどんな気持ちだったかな。受験なんてそんなものに命を奪われた彼はどんな気持ちだったかな。

絶対忘れないで欲しい。子供はどんなに虐待されたとしても親を覚えてる。世界からこんなに悲しいことを消してくれ。