・喜嶋先生の静かな世界


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『喜嶋先生の静かな世界』森博嗣

自分が1番勉強をした時期はいつ頃なのか。私は高校3年生だ。特に英語の担当の先生が学校一厳しい方だったから、それこそ寝る間も惜しんで予習復習に時間をかけていたし、授業中も眠気なんて吹っ飛ぶほど緊張、集中していた。今思えばあの頃の知識が大学に入学してからも生かされ、英語の成績はSしかとっていないし1番上のクラスで学ぶことが出来た。そして何よりも自分の思い出として輝いている。あの頃に書き殴ったノートは捨てられないし、参考書も捨てられない。自分の情熱が残っている気がするのだ。

この本の主人公は橋場という男性で国立大学の理系に進み、研究に打ち込む。そこで喜嶋先生に出会う。これは読んでいけば気付くと思うが、著者の自伝的作品だ。著者が普段思っていること、研究に対しての思いがフワッと軽く、しかし大事な言葉で綴られている。淡々と物語は進んでいく。最後まで「研究」という情熱の難しさを際立たせながら。そして最後の2ページはミステリー作家の作品に相応しく、少し謎めいている。だからこそ心に余計に残るのかもしれない。

私を含めた学生は、きちんと勉学に向き合っているのだろうか。1日17時間を費やしたいと思う情熱を、好奇心を、向上心を持っているのだろうか。私は持っていない。しかしそれは大変残念で勿体ないということに気付いた。この本に出会ったからだ。
残された時間、私は絶対に無駄にしない。大人になる為に、成長する。教養を身に付ける。学生で居られるのは、あと2年しかないのだから。