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また悲しい事件が起きた。同級生と教科書のことで喧嘩になり、相手の同級生を刺した。重体だった被害者は亡くなり、加害者は警察に連行された。

 

どうして、と思わずにいられない。刺した君にも刺されたあの子にも未来があった。まだ見ぬ未来があった。ただニュースで目にしただけであって、君らの間にどんな会話があったのかは知らない。私は部外者だ。でも、一緒にテスト勉強をするくらいだったんだから、きっと仲も良かったんじゃないか。

 

中学生はまだまだ子どもかもしれない。でも私は大人だとも思う。勉強も難しくなるし、部活で上下関係というものも知るだろう。先輩にタメ口をきいたら、きっと怒られるだろうね。性にも目覚めるかもしれない。立派な大人だと私は思うよ。

そんな大人な君が、人の命を奪う権利なんてないんだ。もっと大人になれば気づいたかな。一時の感情に自分の人生を左右される人間ほど無様で低俗で惨めだ。二日酔いの後の味噌汁の旨さや、疲れたときのタバコ、会社での上司の家族の話、大好きな恋人、ロンドンの建物の美しさ、グアムの海の綺麗さ、バリの人の親切さ、体調不良で座り込んだときに席を譲ってくれたサラリーマンの優しさ、君は知ってるか。世界は広すぎて見切れないし、優しい人がたくさんいるし、差別もずっと残ってるんだ。君は知ってるか。そしてそれを知ろうとする未来を奪ったことを分かってるんだろうか。

 

絶対に開き直るなよ。自分は低俗だからね、はいはいと開き直ったらもう終わりだ。死んだ方がマシだ。一生悔やんで一生恨まれて一生震えながら生きていかなければならない。君はもう死ぬことも許されない。

 

どうして、と思わずにいられない。