・一文字

去年のNHK紅白歌合戦で観たSuperflyの愛を込めて花束をに感動してからというもの、YouTubeでその曲を聴くようになった。オーケストラの前で色とりどりの花たちの前に立ち、緑のロングドレスの裾を揺らしながらショートカットの似合う笑顔で歌っている彼女は、圧倒的な眩しさだ。

 

この曲の歌詞の一部分に私はいつも惹かれてしまう。"この込み上がる気持ちが愛じゃないなら 何が愛か分からないほど"この一節だ。この一節、"込み上がる気持ち"というところがポイントだ。"込み上げる"ではなく"込み上がる"なのだ。込み上げるだと、自分の意思があるように思える。上げよう上げようと思って込み上げる。しかし込み上がるという場合、自分の意思に反して勝手に上がってきてしまっているのだ。たった一文字の違いで"抑えようとしても勝手に込み上がってきてしまう気持ち"を表すことが出来ている。素晴らしい例だと思うのだ。

 

日本語はたった一文字で、意味を大きく変える。例えば「カメラ、壊しちゃった。」と「カメラ、壊れちゃった。」はどうだろうか。前者は自分が落としたりなどの理由で自分が壊してしまったのに対して、後者はカメラが勝手に壊れたような印象を与える。たった一文字でこれだけの変化をする。

 

気持ちを伝えるには言葉が必要だ。でも実に難しい。難しいけれど美しい。たった一文字も気を抜けないけれど、大切にしていきたいものだ。"これでいい"ではなく、"これがいい"と思えるように、しっかり言葉を選んで日々を過ごしたいものだ。