・年間ベスト小説、第3位

1年間も終わってしまうので、年間ベスト3の本を紹介したいと思います。まずは3位から!!

 

3位『100万分の1回のねこ』

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これは日本人なら一度は読んだことのあるであろう超有名絵本、佐野洋子作『100万回生きたねこ』のトリビュート作品です。谷川俊太郎角田光代などなど有名作家が参加しています。

どの作品も心に残りました。猫ちゃん目線のお話、猫ちゃんの飼い主のお話。生きること死ぬことのお話。1つの作品の為のトリビュート作品の1つ1つがあんなに濃くて、胸に残るのは、『100万回生きたねこ』が伝える想いが強くて暖かいからなのでしょう。

中でも一番印象に残っている言葉があります。

 

「いや、そんなことは誰でも知ってるよ。畑を売ったら終わりってことはな。だから、それがどんなチンケな畑でも、自分の畑には違いないから売らないで大事にしてるんだよ」
町田康 百万円もらった男

 

ここでいう畑というのは自分の才能が開花する場所のことです。主人公の100万円を貰った男性は、100万円で自分の才能を売ってしまったのでした。売ってしまった才能が開花してしまう、というお話です。売ってしまった才能は二度と取り戻せない、二度と自分のものにすることは出来ませんでした。
才能を売ってお金にするというようなことは現実には起こらないけれど(絵描きが絵でお金を稼ぐというようなことはありますが)、どんなに自分が駄目で何にも成れないと思うことがあったとしても、そんな自分が自分なのだと生きていくしかない。「どんなチンケな畑でも、自分の畑には違いないから売らないで大事」にするしかありませんね。
この本を読んだのは5月のことでしたが、その後7ヶ月ずっと胸に残る言葉でした。

 

佐野洋子作『100万回生きたねこ』では、主人公のねこが真実の愛に出会うまで、100万回生き返ったお話でした。今更思いましたが、100万回生き返ったということは、100万回死んだということですよね。どんな形であれ、死ぬという苦しみを100万回味わうというのは相当なものだったのではないでしょうか。

どんな時も死ぬことと生きること、忘れずに居たいものです。その中で幸せで楽しくて喜べることに出会っていきたいです。