・ショーシャンクの空に


彼と出会ったのは『ショーシャンクの空に』という名作映画だった。この映画を観たのは高校3年生か大学1年生とかそのくらいだった。もうすぐで日付が変わるという時間帯に、リビングのソファでごろごろしながら眠気眼でぼんやりとNHKのBS放送を眺めていた。プレミアムシネマといって、名作や過去の作品を放送するプログラムだった。その日放送されるのが『ショーシャンクの空に』だったのだ。
作品名くらいは聞いたことがある、という印象だった。もちろん当時からこの作品は名作と呼ばれていて、多くのファンがいた。既にモーガン・フリーマンだって超超超有名人だったが、全く注目していなかった私は無知だった。
映画は始まり、夜の暗闇、ウィスキーを飲んでどうやら泥酔状態のアンディーが映る。車には拳銃が見える。泣いているのか?何かに後悔しているのか?決意を固めているのか?
そこからもう、この映画の虜だった。これから彼にどんなことが起こるのか、 気になって仕方がない。眠気眼はすぐに覚めた。
場面が刑務所に移ると、さらに引き込まれる。そう。モーガン・フリーマン演じるレッドの登場だ。レッドの佇まい。何も喋らずとも彼のオーラが私を惹きつける。その口に浮かべた笑みは、優しいのか、はたまた悪事を思い付いたのか。
長年服役しているレッドは「調達屋」として刑務所の立場を確立していた。当時の私は、刑務所=犯罪者の集まる場所、つまり刑務所にいる人はみんな悪い人という考えしかなかった。受刑者の人間性を知ろうともしていなかったのだ。もちろん、刑務所に入っているのだから罪を犯した者達には違いないのだが。彼らも人間であり、刑務所は一つの社会、コミュニティであり、そこには暮らしがある。自分と離れた場所であるからといって、彼らの人間性すら見落とす私はなんと浅はかなのか!!受刑者一人一人は性格や好みが違う。犯罪を犯さなければ、自分と同じ、ただの人間である。レッドの周りにいる個性溢れる受刑者にも注目して頂きたい。
映画は進んでいく。アンディーやレッドを中心に、この刑務所では色んなことが起こる。それはもうここには書ききれない程に。その一つ一つに心底恐怖を感じ、哀しみを抱き、苛立ちを覚えた。映画の時代背景も影響しているだろうが、ショーシャンク刑務所は本当に劣悪だ。
そして忘れてはならない、超重要人物がブルックスだ。彼が出所してからの生活は絶対に観た人の心に刻まれると断言する。彼の不安や、困惑、悲痛、どれも手に取るように、そこにある。彼の生活は現代でも問題視しなければならないのではないかと感じている。
あぁ。レッド。彼を演じるにはモーガン・フリーマン以外考えられない。あの雰囲気、話し方、目線。この映画の中でモーガン・フリーマンは間違いなくレッド本人だった。モーガン・フリーマンを語るには長くなってしまうので、また次回。
この映画は私の世界を大きく変えた。革命を起こした。誰にも胸を張って勧められる作品だ。まだ観てない貴方は、損をしてる。
犯罪は犯してはいけない。しかし犯罪を犯した者も人間だ。自分と同じ人間だ。もしかしたら自分より賢い人間なのかもしれない。そう思うと、自分の背中が丸まる気がする。胸を張って歩くにはどうしたらいいか、考える日々が続く。


レッドの仮釈放の為の最後の面接より。
“後悔しない日などない。罪を犯したその日からだ。あの当時の俺は1人の男の命を奪ったバカな若造だった。彼と話したい。まともな話をしたい。今の気持ちとか...でもムリだ。彼はとうに死にこの老いぼれが残った。罪を背負って。更生? 全く意味のない言葉だ。不可の判を押せ。これは時間のムダだ。正直言って仮釈放などどうでもいい”

貴方は何を感じるだろうか。